NOTES — 研究ノート
日本国内の趣味家シーン
流通の構造
日本のディッキアは、専門誌や大手専門店の大きな市場ではなく、タイからの輸入、個人の出品、栽培者同士の記録の積み重ねが主なシーンになっています。 公開されている情報をもとに、その構造をまとめてみました。
流通の三つの層CHANNELS
第一に、タイ輸入に特化した専門店です。タイの育種家 Q Dyckia など、タイと日本を結ぶ直接の経路が一次情報でも確認できます。
第二に、BASEや個人の小規模セラー群で、実生や交配苗が手頃な価格で出回り、実店舗系のナーセリーが高価格帯の交配実生を扱う例もあります。 愛好家がヤフオクやフリマサイトへ個人出品するケースも重要な流通経路になっており、終了した出品を含む販売情報や履歴も実質的なアーカイブの一つになっています。
第三に、イベント販売があります。 多肉植物全般のイベントの中でディッキアが1つのジャンルとして供給される形もあり、ディッキアに特化したイベントもあります。名古屋・坪井健樹園で開かれるディッキア特化型のイベントで、前身の「NEEDLES」を受けて2022年に大規模化した「SPIKES」は、日タイの育種家・コレクターが集まる年1回のイベントでした。なお、SPIKES は2024年で区切りを迎え、2025年には前身の名を継いだ「NEEDLES」として開かれています。
タイの書式、そのまま日本へFROM THAILAND
日本の出品や記録に現れる交配式や番号の多くは、タイの育種家の書式がほぼ無変換で流入したものです。 Q Dyckia の個体番号(Q-01)や、Q Dyckia の記録に現れるクローン系統の番号(HU-5。Q Dyckia が HU-5 × ‘Bill Baker’ などの交配親として使う系統で、その出自は Q Dyckia 自身の公開資料には記されていません)、選抜クローン名(‘Bone’。Q Dyckia の販売リストでは “Bone cv. of Brittle Star F3” と記され、BCR ‘Nagas’ でも花粉親 ‘Bone’ は ‘Brittle Star’ F3 の grex 出身とされています)が、カタカナの読みを添えて日本のラベルに残ります。 F1・F2・F3 の世代ラベルや略号の書式も、タイと日本で共通です(読み方は「品種名と交配式の読み方」へ)。
BCRと日本JAPAN & THE BCR
国際登録の側では、日本の育種家からの登録もあります。日本で広く栽培されながら起源の記録がなかった ‘Jaws’(#14722)は、愛好家が2018年に BCR へ登録した例です。
興味深いのは、日本の登録の例で、登録関係者(Sant Komsans 氏、Sant Santi 氏ら)が Reg. Doc.(登録書類)を担当していることです(BCR の記載では、‘Patriot Crown’ と ‘Voltage Reversal’ は Sant Komsans 氏、‘Crystal Boy’ と ‘Amazonico Super Phoenix’ は Sant Santi 氏が担当)。同様に、タイ由来の ‘Nagas’ では Paradon Sela 氏が Reg. Doc. を担当しています。
情報の流れをまとめると、タイの育種家ブログ(一次情報)→ 輸入業者とオークション(流通)→ 一部が BCR 登録(制度化)、という流れが基本です。 逆方向、日本から世界への発信は、BCR 登録がほぼ唯一の経路になっています。
調査:2026年10月
